メレメレ

メレメレがやって来たのは7月の終わり.ふわふわし


ていて、白い.だけど毛は硬くて。雑食性の生き物だ.


メレメレは心地よい緊張感を与えてくれる.蒸発しそ


うな私に近寄って、熱気をそっと冷やしてくれるよ


うな優しさがある.メレメレとどこで出逢ったのか、


思い出せない.メレメレは育てなければならない。


っぷりの水と野菜と毎日の毛繕いが必要だ.メレメレ


は死んでしまう.だから育てなければならない.メレメ


レを慈しむ心は私にとっても何かを与えてくれるに


違いない.8月に私は疲れてしまった、普段よりずっ


と.私は泥のような眠りを眠った.その間メレメレはず


っとそばにいた.メレメレを母が売ろうと言い出した.


私は抵抗する、がずっとずっと疲れていた.私に声は


く、したがって主張もなかった.メレメレは売られ


ていった.たくさんのお金が入ってきた.それはメレメ


レに与えた水と野菜と毛繕いよりも多かった.メレメ


レがいなくなり、私たちは小金持ちになった.メレメ


レが来た日のことを思い出せない.不思議なことだ.メ


レメレが消えてしまった.道具を持って行ってしまっ


た.道具はメレメレが持っていった筈だ.メレメレは賢


かったのだろうか.母はメレメレのことを知らない.メ


レメレのことを知るのは僕だけなのだろうか.メレメ


レは可愛いです、育てるのは大変で、でも何かを私


に与えてくれるでしょう、メレメレがやってくる.9


月終わりのことだという.私と母は喜んだ.初めて飼う


動物だったから.たっぷりの水と野菜を用意しよう.そ


うしてメレメレ来るのを待っている.メレメレの前の


飼い主は死んだという.過労死と聞く.可哀想にメレメ


レよ.だから慈しんでやらねばならない.そういえば



メレメレの前の飼い主の名を知らない.

雑な短歌

真白いシャツの如 人生はしらずしらずに薄汚れた黄色いろ



ピカチュウの悲鳴を想いほほえんだ案外カラスに似ているのかも



目の前のガム噛みさえすれば ガム 噛みさえすれば噛みさえすれば……



空港にボストンバックの音鈍く胎児を宿すむかしへ還る



今世紀 こうのとりとは ひこうきに 白い期待は遥かに飛んで



鶯張りの廊下あえて踏み抜いて君を迎えに と曲者は言う



遊びして帰りおる子よ口見れば得体の知れぬ虫食べた跡



わたくしもかつてそこらの雑草を月の光で焼いて食べたわ



紫陽花をたてぬきに駆け少年は サッカーボールを遊ばせている



宇宙を往くカッシーニの寂しさ ねむる前今日の軌跡を夢で辿るとき



廊下にてあいつリンゴの香りして そっかあいつ彼氏ができたのか



リビングに大天使の絵飾られて手に持つ弓は誰をつらぬく



広辞苑いずれ三階より落とし見知らぬ人の頭砕きたい




気に入っていただけた短歌はありますか?なぐさめでツイッターに昔かいたものを字句を改めて載せてみました。